こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。

早いもので、師走を迎え、今年もあとわずかとなってしまいました。2022年もコロナに振り回された1年となってしまいましたが、2023年こそコロナ終息と言えるようになってほしいものです。

海外で出産した場合の日本国籍取得手続きは?

さて、本日は海外で生まれた日本人の子が、日本国籍を取得するための手続きについて、ご案内したいと思います。世界には、大きく分けて日本のような血統主義の国とアメリカのような生地主義の国があります。基本的には日本人の子は日本人ですが、日本で生まれても外国籍の親から生まれた子は日本国籍を取得できません。一方、アメリカの場合には、親の国籍に関わらず、アメリカで生まれれば、米国籍を取得できます。一時期、アメリカ国籍欲しさに日本や中国から出産ツアーなるものが流行ったようですね。フランスのように血統主義と生地主義をミックスした国もあるようです。どれが良いか悪いかではなく、それぞれの国の歴史や文化的背景、また、各国間の法制度の違いにより、このような差が生じています。

それでは、日本国籍の親から生まれた子はどこで生まれようと当然にして、日本国籍を取得できるのでしょうか?

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答えは、Noとなります。両親がいずれも日本人であっても海外で出生した場合には必要な手続きをしなければ、出生時点から日本国籍を得ることはできません。

海外で出産した場合に、忘れてはいけないこと

日本国外で生まれた子で、出生によって日本国籍と同時に外国国籍も取得した子は、出生の日から3か月以内に父又は母等が、日本国籍を留保する意思表示をしなければ、その出生時に遡って、日本国籍を失うと定められています(国籍法第12条及び戸籍法第104条)。

例えば、日本人の親からアメリカで生まれた子は米国籍を取得できますが、日本国籍については、法律で定められた期間内に日本国籍を留保する届出を管轄の在外公館(日本国大使館あるいは領事館)にしなければ、その子は日本国籍を得られません。これは両親の双方が日本人の場合でも、いずれかが日本人の場合でも同じです。日本人の子なのに、日本国籍がない状態となってしまう可能性があるのです。

国籍の留保とは?

日本はいわゆる二重国籍を認めない国ですが、例外的に出生により重国籍となった子は大人になるまでは二重国籍状態を維持することができます。子供が自分で判断できるような年齢となるまでは二重国籍を許容しているわけです。そのための手続きが出生時の「国籍の留保」の届出となります。具体的には、出生届の中で「日本国籍を留保する」旨の記載をする必要があります。

国籍留保の届出を忘れてしまったら?

日本国籍の再取得のためには、国籍法第17条第1項に基づく「国籍再取得の届出」手続きが必要となります。

【国籍の再取得のための要件】

日本国籍を留保しなかったことによって日本国籍を喪失した子が、

 (1)届出の時に18歳未満であること

 (2)日本に住所を有すること

※「日本に住所を有すること」とは、届出の時に、生活の本拠が日本にあることをいう(観光、親族訪問等で一時的に日本に滞在している場合等には、日本に住所があるとは認められない。)。

【手続きの概要】

提出時期:18歳に達するまでの間

提出先:日本国籍を取得しようとする者の住所地を管轄する法務局又は地方法務局(国籍事務を取り扱う支局を含む。)

提出方法:日本国籍を取得しようとする者が15歳以上のときは本人が、15歳未満のときは親権者などの法定代理人が自ら出頭する。

提出書類:基本的な書類は下記のとおり。外国語で作成された書類には、要日本語訳の添付。

・届書(様式用紙は提出先にあり)

・本人出生時の父又は母の戸籍謄本

・出生証明書,分娩の事実を証する書面等

・住民票(日本国籍を取得しようとする者の住所を証する書面として必要)

・出頭者の本人確認書類

国籍再取得のための手続き自体はそれほど難しいものではありません。要件も2つのみです。ただし、そのうちやろうと思っているうちに年齢制限を超えてしまったり、居住要件を満たせなくて、申請ができないというケースは多くあるようです。私の友人もアメリカで出産したものの国籍留保の届出が1日遅れてしまい、子供が日本国籍を留保できず、1年間日本に住み、ようやく子供が日本人となれたそうです。日本人の子でも日本人でなくなってしまう可能性があるのが日本の法律です。海外在住の方はご注意ください!

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