こんにちは。行政書士法人IMSの洪です。

外食業分野における政府の運用方針によりますと、令和6年度(2024年度)からの向こう5年間の受入れ見込数は最大で53,000 人で、これを令和 10 年度末までの5年間の受入れの上限として運用されることになっています。今後は、企業にとって外国人採用は必要不可欠なものとなり、外国人採用合戦に更に拍車がかかるものと考えます。

今回は、外食業の企業が、海外にいる外国人材または日本にいる外国人留学生を採用するにあたって検討すべき就労ビザについて、説明いたします。

外食業において取得可能な就労ビザとは?

外食業において取得可能な就労ビザには「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」「特定技能1号」「特定技能2号」「特定活動(46号)」がありますが、外国人採用は決まったものの、どのようにして適切な就労ビザを選んで申請するかは、入管制度等に詳しくないと対応が難しいかと思います。

※外国料理の調理師のための「技能」ビザもありますが、今回の説明では割愛させていただきます。

就労ビザには、それぞれ従事できる仕事と従事できない仕事があり、また就労ビザごとにいろいろな申請要件が定められてありますが、基本的には以下の内容に基づいて検討することになります。

  • 従事予定の仕事内容(業務内容、職務内容、活動内容ともいいます)に当てはまる就労ビザがあるか確認
  • 当該就労ビザの申請要件の確認
  • 適切な就労ビザを選択
  • 本人の学歴(卒業した学校が日本か海外かもチェック)、仕事内容、申請要件を総合的に検討して申請可否を判断

上記はあくまで就労ビザを申請する側が検討すべき基本的事項になりますが、入管の審査においては、入管法や運用実務上、主に「該当性」「基準適合性」「相当性」の三つの判断基準があり、申請がなされた場合にはこれらの判断基準に基づいて審査が行われ、申請結果が決まります。

以下、以下各就労ビザの要件等を表にまとめましたので、ご参考ください。

就労ビザの種類基本的申請要件飲食業での仕事内容(例)
技術・人文知識・国際業務【1.学歴要件】
・大学(短大含む)以上を卒業→日本、海外の大学どちらでも可。
・専門学校を卒業した者→日本国内の専門学校
上記の学歴要件を満たさない場合は、以下実務経験が必要です。
【2.実務経験】
・10年以上の実務経験
この実務経験には、大学や専門学校、高校で当該知識又は技術に係る科目を専攻した期間を合算できます。
申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務(翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発等)については三年以上の実務経験。
【3.日本人と同等以上の報酬を得ること】
●本社勤務、店舗の店長や主任として、店舗での運営・管理業務およびアルバイト・新人社員等へのトレーニング業務
●店舗での運営・管理業務・翻訳・アルバイトへの教育・その他企画事務
▲接客業務に関しては、一定期間の研修を行い、研修を修了した後に、本社の営業部門や管理部門、グループ内の貿易会社等において幹部候補者として営業や海外業務に従事することとなる場合は、認められる可能性があります。
特定技能1号【1.特定技能1号技能評価試験の合格】
【2.日本語能力試験の合格】
「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」
【3.外国人への支援の実施】
自社内対応もしくは登録支援機関へ委託
【4.報酬の額や労働時間等が日本人と同等以上】
●飲食物調理(客に提供する飲食料品の調理、調製、製造を行うもの)
●接客(客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの)
●店舗管理(店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの)
〈 想定される関連業務 〉
●店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
●客に提供する調理品等以外の物品の販売
特定技能2号【1.特定技能2号技能評価試験の合格】
2年間の実務経験が必要。
【2.日本語能力試験の合格】
外食分野では、日本語能力試験(N3以上)が求められます。
【3.報酬の額や労働時間等が日本人と同等以上】
●飲食物調理(客に提供する飲食料品の調理、調製、製造を行うもの)
●接客(客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの)
●店舗管理(店舗の運営に必要となる上記2業務以外のもの)
〈 想定される関連業務 〉
●店舗において原材料として使用する農林水産物の生産
●客に提供する調理品等以外の物品の販売
特定活動(46号)【1.日本の大学、短期大学、認定専門学校等を卒業】
認定専門学校の場合は、「高度専門士」の称号を得た者
【2.日本語能力】
日本語能力試験N1、又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上
【3.日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務であること】
「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることがことが求められます。
【4.報酬の額や労働時間等が日本人と同等以上】
●飲食店に採用され、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務(日本人に対する接客を行うことも可能)
※表のPDF表示はこちらをクリックしてください。

就労ビザを取得して働く外国人の場合は、就労ビザ毎に仕事内容が制限されますので、日本人のようにどんな仕事でもできるものではありません。しかし、2019年から始まった「特定技能」ビザ制度により多くの分野で単純労働が認められるようになりましたので、企業にとっては外国人材採用の幅が広がったと言えます。

入管法や在留資格の制度は、頻繁に改正されたり運用実務が変更されますので、ビザ申請については、常に最新情報に基づいた判断が必要になります。これから外国人採用をご検討中の企業の皆様、ぜひ弊社にご相談ください。