こんにちは。行政書士法人IMSの伊東です。

2019年4月1日に働き方改革関連法(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)の施行が開始し、労働基準法を始めとする労働に関連する法律が改正され、時間外労働も制限されました。一般的には、原則月45時間、年間360時間と規定され、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用が開始されています。ただし、事業や業務の特性上、例外的に物流・運送・建設・医療業界などに対する適用には、5年間の猶予期間が設けられ、それが2024年3月末までとなっており、4月以降は年間960時間の上限制限が適用されます。現在、オンラインショッピングが盛んで、物流量が増加傾向にある中で、この適用により、さらに人材不足が問題となっていくことが見込まれています。①拘束時間が減少することでこれまでに支払われていた時間外手当の減少に伴う収入減少から業界を離れるドライバーが出てくること、②一日の運搬量の減少による配達期間の延長、③人件費の上昇が予測されています。すでに日本郵政は4月1日以降、ゆうパックや速達郵便の配送日数の見直しを行い、南関東から九州の一部地域や函館への配達時間を後ろ倒しにすることを決定しており、10月1日以降に配達希望時間帯を短縮します。また、ヤマト運輸がメール便とポストサイズの荷物の配達を日本郵政に移管したため、1月末で委託契約が終了となった労働者もいます。

物流業界ではデジタルツールを導入し、業務の改善や効率化を図っていますが、人材不足を補うには不十分な状況です。このような中で、政府は①自動車運送業、②鉄道、③林業、④木材産業の4分野を在留資格「特定技能」に追加する方向で検討を進めています。自動車運送業の対象はバス、タクシー、トラック運転手などです。バスやタクシーの運転手として就労するためには第2種運転免許が必要となりますが、警察庁が例題を20言語に翻訳し、試験で多言語対応できるように整えています。

4月1日までは到底間に合いそうにはありませんが、明るい話題ではあります。特定技能は就労を希望する分野の試験と各分野で定めたレベルの日本語能力が必要とされています。先日、とあるテレビ番組でタクシー会社の会長に密着していました。巨額の負債を抱えていた会社を立て直し、現在は配車アプリの運営に力を入れ、様々な改革に取り組んでいました。その改革の一つとして、観光客が多い雪の降る地域での配車サービスを開始しています。冬のスポーツができる地域は外国人観光客が自身でレンタカーを運転し、慣れない雪道で事故を起こす事例が発生しているようです。交通の便が悪く、荷物も多いため、レンタカーを利用しているものと推測されます。配車アプリであれば自身で配車を依頼することができますし、在留資格「特定技能」で自動車運転業が追加された折には、日本語も話すことのできる母国語で送迎してくれる運転手がいるということは、観光客にもタクシー会社にも頼もしい存在になることでしょう。なお、在留資格「特定技能」を受け入れるためには企業側の体制を整える必要があります。登録支援機関に依頼するのか自社内で体制を整えるのか、まずはその検討から始めるとよいでしょう。

出入国在留管理庁:「特定技能ガイドブック(事業者の方へ)」https://www.moj.go.jp/isa/content/930006033.pdf