こんにちは、行政書士法人IMSの桑原です。

今日は久々に在留資格「特定技能」について書きます。

この在留資格名を聞くと、気持ちが重くなります。というのも、この在留資格が新しく創設された時、入管から出された情報は膨大で、全てに目を通す作業の大変さと、本当にこの制度で入管が言っているように年間数万(当初は5年間で34万人の受入を予定)の人員が日本の企業に雇用されるのだろうかと、運用要領と現実を思い浮かべ懐疑的になった気持ちを思い出すからです。

果たして、最初の年は3月末で5,700人の許可、今年6月末時点では、38,000人の許可に留まっています。この人数は、特定技能の在留資格に関する申請が許可されたものなので、申請件数自体はこの数倍なのでしょうが、なぜこんなことになっているのでしょうか。もちろんタイミング悪く(?)新型コロナウィルスが発生してしまったため、入国制限に引っかかって来日ができないことも要因の一つかと思います。しかし、やはり運用方法と申請書類の量が、当初の特定技能創設の目的(以下参照)とかなりずれているからではないかと考えざるを得ません。

*******(入管HP「特定技能外国人受入れに関する運用要領」https://www.moj.go.jp/isa/content/930004944.pdfより抜粋 *******

在留資格「特定技能」創設の目的

中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化しており,我が国の経済・社

会基盤の持続可能性を阻害する可能性が出てきているため,生産性向上や国内人材確

保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分

野において,一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組み

を構築することが求められているものです。

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小規模事業者の方からの特定技能に関するお問い合わせもいただくのですが、特定技能で人を雇用しようとする際、どのような点に気を付けなければいけないか、代表的なことを下記します。

【申請人に求められる条件】

①雇用先企業の分野(現時点では14の分野に分かれています)に合わせ設定された試験に合格していること

②日本語能力N4レベルの試験又は同等の試験に合格している証明書が準備できること

③「留学」の在留資格で滞在していた者からの変更の場合には、退学・除籍留学生ではないこと

④失踪した技能実習生ではないこと

⑤技能実習2号からの変更の場合には、実習計画を良好に修了していること

【受入機関に求められること】

①特定技能外国人の報酬は日本人のそれと同額以上の設定をすること

②特定技能外国人が来日・帰国する場合は送迎をすること

③直接雇用をすること(農業・漁業以外)

④特定技能外国人が退職し自国に帰国する場合に旅費がない場合は、その旅費を負担すること

⑤労働関係法令、社会保険関係法令及び租税関係法令を遵守していること

⑥非自発的離職者を発生させていないこと(従業員をクビにしていないこと)

⑦特定技能外国人に支払う給与は銀行口座に振り込みで行うこと(例外措置あり)

⑧1人あたり7.5㎡以上の広さの住居の確保をすること(契約等には同行すること)

⑨日本の生活において、電気・水道・ガスなどインフラに関わることについては環境を整える補助をすること

⑩日本での生活に関する情報(医療を受けることができる医療機関に関する事項・出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項等)を特定技能外国人が理解できる言語で提供すること(8時間以上の時間がかかるような内容でなければならない)

⑪行政機関での手続き(同行することが望ましい)

⑫日本語学習の機会を与えること

⑬特定技能外国人が転職する際にはサポートすること

手厚いサポートをしなければ特定技能の在留資格で外国籍の人は雇用できないことが、上記から読み取れます。そして、小規模事業者には⑤・⑦あたりが耳に痛い要件なのではないかと推測します。しかし、これなら技能実習の方が楽じゃないかと。技能実習制度に問題があるから創設された制度でしたが、結局技能実習制度を助長している制度なのではないかと考えざるを得ません。

そして、制度が始まって2年が経ち、特定技能外国人の方から、会社を辞めたけどどうしたらいいかという旨のお問い合わせも稀ではありますが入るようになりました。あらら、受入機関サポートしてないじゃない、と。しかも技能実習制度ほど厳格管理ではないので、失踪外国人が増えるような気がしてなりません。

労力不足を解決するために考えて創設された在留資格ではありますが、移民政策をとっていない日本では、外国から人を呼んで思い通りに運用すること自体なかなか難しいのかもしれません。