こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。

11月に入っても暑くなる日があり、気候変動をひしひしと感じておりますが、木々が色付き、ようやく秋の気配を感じられるようになったと思ったら、もう一気に冬の気配ですね。日本の良さである春や秋がどんどん短くなってきているように思います。

さて、本日はしばしばお問合せをいただくESTAやBビザで渡米した際の米国での滞在期間について、ご案内させていただきます。

ESTAとBビザの期間に関する相違

これまでにもご案内のとおり、ESTAでもBビザでも米国内で活動できる内容に相違はありません。大きな違いは期間に関するものです。下記をご確認ください。

 ESTABビザ
有効期間最長2年間(パスポートの有効期限が短い場合には、パスポートの有効期限まで)最長10年間(ビザの有効期間はパスポートの期限には左右されない。)
最長滞在可能期間90日180日

最長滞在可能期間とは、1回の入国で滞在できる最長期間です。ESTAやBビザを持っていれば、当然に最長の滞在期間が付与されるわけではなく、入国審査を経て、入国審査官により滞在期限が決定されますので、入国後には必ず出入国記録「I-94」でご自身の滞在期限を確認することが何よりも重要です(最近ではパスポートへの入国スタンプが省略されることが多くなっておりますので、I-94で確認しましょう。)。

Bビザでのご渡米で当然に180日の最長滞在期間が付与されていると思い込んでいたところ、実際には2週間しか許可されておらず、知らずの間に5カ月ほどのオーバースティになってしまい、米国に再入国できなかったというケースがありました。この方の入国拒否後の新たなBビザ申請を弊社にてサポートさせていただき、無事に再度Bビザが発給されましたが、ご本人は記録を確認されなかったことをとても悔やんでいらっしゃいました。

Visit vs Stay

それでは、有効なESTAやBビザさえあれば、繰り返し、制限なく、渡米ができるのでしょうか。移民国籍法には、この件について、特に規定はありません。ただし、例えば、Bビザで180日、あるいはESTAで90日米国に滞在し、I-94をリニューアルするために、一旦、カナダやメキシコに行って、再び米国に戻るといういわゆる「とんぼ返り」のような使い方は「できない」とお考え下さい。そのような使い方はもはや、ESTAやBビザの範疇を超えてしまっているためです。この方法を試みて、入国拒否になった事例も良く聞き及んでおります。

ESTAもBビザもあくまでテンポラリーな滞在を認めるものであり、米国を「visit(訪問)」するためのものです。決して米国に「stay(滞在)」するためのものではありません。Bビザは最長10年間の有効期間がありますが、決して10年間米国に滞在できるためのビザではありません。1年間に数回程度、1回1-2週間程度の旅行や出張に使うのであれば、恐らく問題は起きませんが、あまりに頻繁な渡米や1回の滞在が長期に及ぶような使い方をしていると大抵はどこかの時点で、入国拒否になったり、ビザ自体が勝手にrevoke(取り消し)となったりします。revokeの場合には、通常、米国大使館からメールが届くのですが、メール自体に気付かなかったりして、渡航当日に空港のチェックインカウンターで「あなたのビザは既にキャンセルされているので、本日は搭乗できません。」と言われ、初めて知ることになるということも多発しております。

「半年」が一つの目安

「1年間に数回程度、1回1-2週間程度」よりももう少し米国に行きたいという場合、どの程度までが安全なラインは非常に難しい問題ですが、一つの目安は「半年」です。1年間に(カレンダー上の1月~12月というわけではなく、いかなる365日においても)トータルで半年以上、ESTAやBビザで米国に滞在しようとするのは非常に危険です。先ほどお伝えのように、移民国籍法に特に規定はありませんが、二重課税を防止する租税条約では米国に「183日以上」滞在した場合には、翌年の確定申告での申告義務が発生します。それは税法上、「非居住者」ではなく、「居住者」扱いとなることを意味します。上記で述べたように、ESTAやBビザはあくまで米国「visit」のための手段ですから、「居住者」扱いになるのはおかしなことであることはお分かりいただけると思います。実際に入国審査時のインタビューの中で、事細かにこれまでの米国滞在歴を指摘され、米国滞在がトータルで長すぎるから、「移民の意思」があるとみなされて、入国拒否になった方もいらっしゃいます。1回の滞在が規定以内だからと言って、安心はできません。あまりに頻繁な渡米、1回の滞在期間が長い場合には、別の居住用のビザを検討されることをお勧めいたします。

これまで結構たくさん渡米しているけれども、入国審査で別室送りになったこともないし、いつもスムーズに入国できているという方は、これまでラッキーだっただけかもしれません。米国内で仕事をしているわけでもないし、報酬を得ているわけでもない、ただのんびり過ごすためにハワイに行っているというような方も要注意です。ESTAやBビザはあくまで「visit」のための手段ということを忘れないでください。米国の入国審査官は「visit」か「stay」かを単に米国での滞在期間で判断することもあるのです。