こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。

10月に入り、ようやく涼しくなり、秋の気配を感じられるようになりました。寒暖差が激しいので、体調を崩さないようにしたいですね。

本日はアメリカで撮影を行いたい場合のビザについて、考えてみたいと思います。撮影と一口に言っても、映画、テレビ番組、コマーシャル、雑誌、企業紹介等様々な目的での撮影があります。そして、昨今、問い合わせも非常にたくさんいただいております。

Iビザのルール改正

5年ほど前までは、Iビザと呼ばれる報道、メディアビザが多く利用されていたように感じられますが、2018年8月にルールが改正され、Iビザの要件が厳しくなったことから、容易に手出しすることができないビザとなってしまいました。

HIFAビザ免除プログラムの停止

撮影場所として絶大な人気を誇るハワイでの撮影については、コロナ前まではハイファビザ免除パイロットプログラム:HIFA (Hawaii International Film Association) Visa Waiver Pilot Programを利用することで、日本等このプログラム適用国の国籍者は、ビザなし渡航によってハワイでの撮影が認められていました。1998年から始まったこのプログラムの恩恵を受け、日本で放映された多くのテレビやコマーシャルがハワイで撮影されてきました。本プログラムの利用には、下記のような条件がありました。

  1. HIFAビザ免除パイロットプログラムが適用される国の撮影隊であること
  2. 制作される作品は、アメリカ国外での放映、配給、販売されること
  3. 撮影ロケ地はハワイ州内に限ること
  4. ハワイの地元労働組合員を最低1名は、撮影技術者、ドライバー、俳優、モデル等として、雇用すること

このように観光地ハワイにとって、映像を通して、ハワイの魅力を伝えるチャンスであったばかりでなく、ハワイの雇用創出も担ってきたこのパイロットプログラムですが、コロナ禍の2020年3月に米国CBP (Customs and Border Protection、税関・国境取締局)により、このパイロットプログラムが突然停止されてしまいました。HIFAでは、このプログラムが再開できるよう請願書を募っていますので、ご興味おありの方はこちらからご確認ください。

Iビザで撮影ができるのか?

Iビザは報道関係者ビザとも呼ばれるメディア関係者向けのビザです。以前は、例えば、ニューヨーク、LA、サンフランシスコといった日本人が多く在住している日本人向けのフリーペーパーに記事を書く程度でもIビザの許可を得られていたようですが、2018年8月に “Journalistic Information”が厳格に定義されたことにより、Iビザ取得の難易度が格段に上がってしまいました。IビザはこのJournalistic Informationを米国内で一時的に収集し、米国外で報道する場合に適したビザです。現在、Journalistic Informationとは、報道性があり、ニュースの取材や最近の実際の出来事のレポートなど報道に関連したものとされています。教育的な要素があれば、Journalistic Informationと認められる可能性はあります。情報よりも娯楽性が高いもの、再現ドラマ、広告やマーケティングを目的とするもの、個人的な体験談等は含まれません。つまり、報道性がある撮影であれば、Iビザを取得の上、撮影に臨んでも問題ありません。ビザを取得できる可能性があるのは、報道、ラジオ、出版等に携わる、ジャーナリスト、プロデューサー、レポーター、編集者、撮影クルー等となります。

Iビザに該当しない場合は・・・

例えば、映画の撮影であれば、O(卓越能力者)ビザやP(スポーツ選手、芸術家、芸能人)ビザが該当する可能性があります。これらのビザはその補助者(マネージャー、スタイリスト等)も取得できます。また、その他の撮影では、H2Bビザ(短期就労ビザ)が適切な場合もあるでしょう。ただし、いずれのビザも米国移民局の許可が必要なため、ビザ取得にはかなりの手間と労力が掛かります。

短期間の撮影であれば、ESTAや短期商用向けのB-1ビザで問題ないのではと考える方が非常に多いようですが、米国の場合、ビザは期間の長短ではなく、米国での活動内容が大切となります。撮影機材を持っていたりした場合、適切なビザを有していないという理由で、入国拒否に遭われている方が実際に多くいらっしゃいます。撮影用のビザの取得は現在、大変難しい状況ではありますが、ビザ制度を十分にご理解いただいた上で、撮影スケジュールを立てられることをお勧めいたします。