明けましておめでとうございます。行政書士法人IMSの松井です。

本年もこのコーナーで、ビザに関する役立つ情報を発信していきたいと思います。ビザに関する法律や運用はどこの国でも、時の情勢に応じて頻繁に変更されます。私たちも常に勉強の日々です。できる限り、最新情報をお届けしてまいりますので、たまに弊社ウェブサイトを訪問していただけますと幸いです。

B-1 in lieu of H-1B

B-1ビザ取得でアメリカで仕事はできるのか?

本日は米国の「B-1 in lieu of H-1B」というビザカテゴリーについて、ご紹介させていただきます。ESTAでは仕事はできないが、B-1ビザを取れば、仕事ができると思われている方が多くいらっしゃるようで、「数か月ほどアメリカで仕事をしたいので、Bビザを取得したい。」といったお問い合わせを頻繁に受けますが、これは誤った認識です。ESTAもBビザも米国内で可能な活動については、何ら違いはありません。いずれも、観光あるいは短期商用活動のみが認められており、違いは最長滞在可能期間(ESTAは90日、Bビザは180日)とビザの有無のみです。短期商用でできる活動は、一般的にはミーティングやセミナーへの出席、視察、契約交渉、事業のための候補地の調査等に限られます。就労ビザではないため、営業利益に直結するような活動は違法な行為となってしまいます。このことを理解していないために、入国拒否やビザ却下となってしまうケースが多くあるようです。

短期間アメリカで就労したい場合

しかしながら、グローバル化する社会において、数か月~半年程度の短期間、海外での就労が求められるケースも多いかと思います。そのような時に使用できる米国ビザの一つが「B-1 in lieu of H-1B」となります。このビザはH-1Bビザという専門職(Specialty Occupation)向けの就労ビザの「代わりに」Bビザを取得することで米国での就労ができるようになるものです。取得のための要件は下記のとおりです。

B-1 in lieu of H-1B 取得のための要件

  1. 一般的なB-1ビザの要件(逮捕歴や犯歴がない、米国への移民の意思がない、日本との結びつきが十分にある等)を満たしていること
  2. 申請者の学歴、職歴がH-1Bビザの要件を満たしていること
  3. 雇用主は米国外の企業であること
  4. 一時的な就労であること
  5. 米国で従事する職務内容が、H-1BビザのSpecialty Occupationに該当すること

ここでは、上記のうち、2の学歴・職歴要件と5のSpecialty Occupationについて、補足いたします。

まず、学歴・職歴要件ですが、基本的には大卒以上の学歴が必要です。大卒でない場合には、12年以上(短大卒の場合には6年以上)の専門職に該当する職歴でカバーできる可能性があります。次にSpecialty Occupationですが、これは学歴のバックグラウンドがなければ、難しい仕事、その業務遂行のために学士号以上の学位を必要とし、その学位がなければ業務遂行が難しいような仕事を指します。要するにいわゆる単純労働的な仕事は認められないということです。

B-1 in lieu of H-1B は廃止される?

実は、このB-1 in lieu of H-1Bについては、トランプ政権下の2020年10月に国務省より廃止案が提案されました。パブリックコメントの募集を経て、数か月程度で最終的な決定がなされるかと思われたため、弊社でもしばらくの間、このカテゴリーでの申請を控えておりました。しかし、法案の審議が途中で止まったようで、2022年7月には米国移民局から、廃止案の計画を再考しているとの発表がありました。昨年12月にお問い合わせいただいたケースが、ちょうどB-1 in lieu of H-1Bがぴったりの案件だったため、お客様に事情を説明の上、久しぶりに申請したところ、特に問題なく、スムーズに許可となりました。

このビザは、ビザ面に「B-1 in lieu of H」と記載されますので、入国審査時も堂々と入国目的を「仕事です。」と答えられます。取得できれば、非常に使い勝手の良いビザだと思います。ご興味がおありでしたら、ぜひIMSまでお問い合わせください。