高等教育を軸としたグローバル政策の方向性

皆さま、こんにちは。IMSの下山です。
週末以降、連日快晴+35℃前後の気温で、早くも梅雨明け?という感じですね。
急に暑くなりますので、熱中症などにはお気をつけください。

さて、弊社顧問先の各大学では秋入学の留学生のCOE申請がピークを迎えておりますが、日本は皆さまご存知のとおりコロナが始まった2020年以降、いわゆる“鎖国”政策をしき、新規入国の留学生が長く入国できない時期が続きました。
オンライン授業といっても、時差の関係で現地時間では真夜中に授業を受けなければならなかったり、通信環境が整っていない地域にいる学生は参加が難しかったりと、大学を通じて様々な苦労を耳にしていました。
今年3月以降ようやく留学生の新規入国が認められるようになりましたが、この2年の間に海外留学生の中に芽生えた不信感を払拭することはなかなか難しいのではないか、ということは弊社YouTubeでも再三お伝えしているとおりです。

文科省が新型コロナウイルスの影響で減少した外国人留学生の受け入れと、日本人学生の海外留学について、2027年をめどにコロナ禍前の水準に回復させる方針を固めた、という報道を今週目にしました。外国人留学生は約31万人、日本人の海外留学は約12万人が目安となるそうです。
中央教育審議会大学分科会で示された「高等教育を軸としたグローバル政策の方向性(案)」には戦略的な外国人留学生の確保として下記が挙げられています。

①重点分野・重点地域の再設定
→外国人留学生の受入れ等において、時代・社会のニーズの変化を踏まえ、関係省庁と連携し、重点分野・重点地域を再設定する。当該設定に基づき、各種留学生支援事業を戦略的に見直す。
②留学海外拠点、対外広報機関と連携した外国人学生に対する情報発信の強化
→大学の留学海外拠点や、対外的に日本の魅力を発信する関係省庁・機関等と連携し、日本留学に関心を持つ外国人学生に対して日本留学の魅力や、日本で就職したロールモデルなどの発信を強化していくことで、落ち込んだ日本への留学の機運を再び高める。
③外国人留学生の就職・起業支援の強化
→高度外国人材の需要の高まりを受け、国内企業等への就職にあたって重要なスキルとして位置付けられるビジネス日本語教育やインターンシップ等を軸とする教育プログラムの展開を更に推進するほか、当該プログラムへの参加を後押しするため必要な支援を拡充し、我が国への外国人留学生の定着を促進する。
④地域における外国人留学生の就職支援の強化
→関係省庁と連携し、地域の地方自治体・大学・経済団体・日本企業・JETRO等から構成されたコンソーシアムを形成するなど、外国人留学生の就職・定着の支援に向けた取組を強化する。
⑤知日派人材育成のための留学経験者ネットワークの強化・活性化
→関係省庁及び大学と連携して、特に帰国した国費留学生OB・OGを対象としたフォローアップを深めることにより、現地での留学経験者ネットワークを強化し、継続的な知日派人材としての活動を促すとともに、当該ネットワークを活性化させることで、将来的な留学生の獲得につなげる。
⑥我が国における日本語教育の質向上
→外国人留学生の我が国の大学や日本語教育機関等での円滑な受入れを促進するため、日本語教師の新たな資格制度及び日本語教育機関の水準の維持向上を図る認定制度に関する新たな法案の速やかな提出に向けて検討を進める。
⑦高等学校段階における外国人留学生の受入れ
→我が国の大学での継続的な留学や、将来的な定着を見据え、高等学校段階からの外国人留学生の受入れを積極的に促進するとともに、そのための受入環境整備を支援する。

文科省が留学生の受け入れに力を入れるのは、「日本国内で少子化が急速に進む中、日本の教育研究力向上には世界中から優秀な人材を受け入れることが不可欠であるため」と言われていますが、一度失った信頼を取り戻していくことは難しく、本気で留学生を確保していきたいのであれば、国を挙げてこの問題に取り組んでいく必要があるように感じます。
大学の顧問業務に携わる弊社にとって、この問題は他人事ではなく、今後も注視していきたいと思います。