こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。

長い名前なので略して“技人国”とも呼ばれる在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、2024年6月現在の統計によると、就労資格で在留する外国人数の約3割を占める主要な在留資格となっています。留学生が大学を卒業して一般企業で働く場合も主にこの在留資格への変更が必要になります。

今回は、この「技術・人文知識・国際業務」について改めて上陸基準省令を見ておきたいと思います。こちらの上陸基準省令は、新規入国の時だけでなく、在留資格変更の時にも許可を受けるために必要な条件となっています。

「技術・人文知識」と「国際業務」

在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、平成26年の入管法改正により、「技術」と「人文知識・国際業務」の2つが統合されて出来た在留資格です。また、それ以前に「人文知識・国際業務」の基準について行われた改正の内容も引き継がれているため、上陸基準省令の文章はなかなか読みにくいものとなっています。文章を読むと「次のいずれにも該当していること」「ただし、・・・の場合はこの限りでない」という言い回しが繰り返し出てきますので、構造を整理して理解しておきたいと思います。

なお、「技術」は理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務、「人文知識」は法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務、「国際業務」は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務のことです。

基準その1・・・「技術・人文知識」の場合は次のいずれかに該当していること

イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。

 <但し書きで、上記イロハに該当しなくても良いとされる条件>

 A 申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、
   A-1 法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格している
   A-2 又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有している
 つまり、イorロorハor(AかつA-1)or(AかつA-2)ということになります。

基準その2・・・「国際業務」の場合は次のいずれにも該当していること

イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。

<但し書きで、上記ロに該当しなくても良いとされる条件>

 B 大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合
 つまり、(イかつロ)or(イかつB)ということになります。

基準その3・・・「技術・人文知識・国際業務」共通の条件

・日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

「技術・人文知識・国際業務」の業務内容に該当しなくても許可される場合

更に、上記の3つの基準の前の柱書きにも、「次のいずれにも該当していること」「ただし、・・・の場合はこの限りでない」という言い回しで、上記の基準を満たさなくても「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が許可される場合があることが示されています。

これは、過去に外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律の改正に伴って「技術・人文知識」の基準が改正されたことを引き継いでいる部分です。

外国人弁護士は、民事・商事の分野において国際間で発生した紛争を解決するために、日本の企業または個人との契約に基づいて、その仲裁手続きにかかる代理業務を行うために日本への入国が可能とされていますが、その時の在留資格は「技術・人文知識・国際業務」になります。日本の弁護士資格をもっている外国人であれば「法律・会計業務」という在留資格がありますが、ここでいう外国人弁護士は、その要件に該当しないためとされています。

「技術・人文知識・国際業務」の上陸基準一つを取っても、そのまま読んで理解するのはなかなか骨が折れる作業ですが、独特の言い回しに慣れ、書かれた背景が分かると理解が進むようです。原文は以下のリンク先をご参照ください。

参考:

出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令 | e-Gov 法令検索
  →法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
・『入管関係法大全 2在留資格』出入国管理法令研究会編著(日本加除出版)

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