こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。

現在、日本の大学で学んでいる留学生の中には、卒業後も日本で働くことを希望されている方も多くいらっしゃいます。働き方としては、先ずは企業などに就職するケースがほとんどかと思いますが、最近は、在学中から個人事業主として事業を行っている方や、会社設立を計画している方も見受けられるようになりました。

今回は、留学生が自ら起業する場合の在留手続について、見ておきたいと思います。

資格外活動の「個別許可」申請が必要な場合

先ずは、留学生が個人事業主として事業を始める場合ですが、この場合、メインの活動が学生である限り在留資格は「留学」のままで、事業活動は「資格外活動許可」の範囲内でのみ行うことが可能です。通常、留学生の資格外活動許可は、アルバイトなどの勤務先や仕事の内容を特定しなくても申請できる「包括許可」によって行われ、風俗営業等を除いて週28時間以内の就労が認められますが、個人事業主の場合は、就労時間を客観的に確認することが困難なケースがあります。そのため、そのような場合は、「包括許可」ではなく、資格外活動の内容や場所、期間を具体的にして申請する「個別許可」が必要となります。

在留資格「経営・管理」への変更が求められる場合

次に、個人事業ではなく、会社を設立して従業員を雇用するような場合ですが、会社の経営を行う場合は、もはや資格外活動では行うことはできず、在留資格「留学」から「経営・管理」に変更することが求められます。在留資格を「経営・管理」に変更しても、学生としての活動は報酬を得る活動はありませんので、そのまま続けることは可能です。しかしながら、仮に、学生と会社経営の仕事が両立できるとしても、在留資格「経営・管理」に変更するためには、事業所の確保、及び2人以上の常勤の従業員の確保または500万円以上の資本金等が求められますので、「経営・管理」への変更のハードルは高いと言えるでしょう。

卒業後、起業活動のための「特定活動」に変更が可能な場合

なお、留学生が日本の大学を卒業した場合は、直ぐに在留資格「経営・管理」への変更が出来ない場合でも、卒業後、起業活動のための「特定活動」に変更して、一定の期間日本に滞在することが可能です。起業活動をサポートするための「特定活動」には、いくつか種類があります。

1つ目は、対象となる大学等の指定がない起業活動のための「特定活動」ですが、大学の学部又は大学院を卒業(又は修了)後6月以内に、会社法人を設立し起業して在留資格「経営・管理」に在留資格変更許可申請を行うことが見込まれる、優れた起業・経営能力を有する留学生であれば申請可能です。但し、大学による推薦を受け、起業に必要な資金並びに店舗又は事務所が確保されており、大学による起業支援が行われていることなど、個別には多くの要件を満たす必要があります。
【参考】1 本邦の大学等を卒業して起業活動を行うことを希望する方 | 出入国在留管理庁

2つ目は、対象となる大学は限られますが、「優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいる大学等」を卒業して起業活動を行うことを希望する方については、一定の要件を満たせば、最長2年間在留資格「特定活動」(告示外)が認められています。「優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいる大学等」とは、文部科学省の実施する「留学生就職促進プログラム」の採択校若しくは参画校又は「スーパーグローバル大学創成支援事業」の採択校です。

この他、日本の大学では対象となる大学が非常に限られますが、優秀な海外大学等を卒業等した方が日本で「就職活動」又は「起業準備活動」を行うための在留資格「特定活動」(未来創造人材・51号告示)に変更すれば、最長2年間の在留が可能となる制度もあります。
【参考】未来創造人材制度の対象となる大学一覧(PDF)(令和7年1月時点)

在留資格「留学」のままで会社を設立できるのか

ここまで、留学生が日本で起業して会社を設立し、在留資格「経営・管理」に変更するまでには高いハードルがある前提で話を進めてきましたが、別の問題として、在学中に会社を設立できる場合でも、在学中は何らかの理由で「留学」の在留資格を維持したいという場合もあるかも知れません。このようなときは、どうしたら良いのでしょうか。

前述の通り、在留資格「留学」のままでは、会社の経営者として働くことは出来ません。一方、会社の株式を持つことや、その会社に雇用される形で働くことは可能です。ですので、自分が出資して会社を設立しても、別の方に経営者なってもらえば、自分は資格外活動許可の範囲内で会社と雇用契約を交わすことによって、学生の間はその事業にアルバイトとして携わるという方法があります。

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