こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。
入管法では、中長期在留者に該当する方、つまり日本に滞在する外国人の方で、在留カードを交付されている方について、住居地や所属機関に関することなど、外国人本人による届出義務を定めていますが、この他に、中長期在留者を受け入れている機関による届出についての条文もあります。今回は、この所属機関による届出について、理解を深めておきたいと思います。
本人の届出は「義務」、所属機関の届出は?
外国人本人による所属機関に関する届出と、所属機関による届出は、それぞれ、入管法第19条の16と17で、定められています。
(所属機関等に関する届出)第十九条の十六
中長期在留者であつて、次の各号に掲げる在留資格をもつて本邦に在留する者は、当該各号に掲げる在留資格の区分に応じ、当該各号に定める事由が生じたときは、当該事由が生じた日から十四日以内に、法務省令で定める手続により、出入国在留管理庁長官に対し、その旨及び法務省令で定める事項を届け出なければならない。
(所属機関による届出)第十九条の十七
別表第一の在留資格をもつて在留する中長期在留者が受け入れられている本邦の公私の機関その他の法務省令で定める機関(次条第一項に規定する特定技能所属機関及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第二十八条第一項の規定による届出をしなければならない事業主を除く。)は、法務省令で定めるところにより、出入国在留管理庁長官に対し、当該中長期在留者の受入れの開始及び終了その他の受入れの状況に関する事項を届け出るよう努めなければならない。
先ず、それぞれの条文の最後を見ると、届出は、外国人本人にとっては「義務」であるのに対し、所属機関にとっては「努力義務」であることが分かります。
更に、所属機関の「努力義務」については、下線部分で除外されている事業主があることが分かります。ひとつは、在留資格「特定技能」の外国人を受け入れている機関で、こちらは入管法第19条の18で届出の義務が定められています。もう一つは、厚生労働省への「外国人雇用状況の届出」が義務付けられている事業主ですので、外国人を雇用している機関については、別の法律で届出の義務が定められているということになります。
これらを除外すると、「努力義務」のみが課されているのは一部に限られるということになります。委任契約により役員として外国人を受け入れている機関や、在留資格「研修」や「留学」の方を受け入れている機関がこれに該当します。
本人と所属機関、双方からの届出を求める意図
「義務」と「努力義務」という違いはあるものの、本人と所属機関の双方から届出を求めているのは、両方の情報を突合することにより、情報の正確性を確保しようという目的です。
厚生労働大臣への届出義務を定めている法律(労働施策総合推進法)では、入管法で定める事務処理に関して、外国人の在留に関する事項の確認のための求めがあった時には情報を提供するということも明記されており、出入国在留管理庁では厚生労働省の情報もこの目的のために使えるようになっています。例えば、外国人本人が届出義務を果たしていないことが、厚生労働省からの情報により、出入国在留管理庁には分かるというケースがあります。
努力義務を怠った場合
なお、「努力義務」には、違反者に対する罰則はありませんが、届出の努力義務を怠っている機関については、所属している外国人の方々の在留期間更新許可申請等の時に事実関係の確認を行うなど審査を慎重に行うことがあるとされています。多数の留学生を受け入れている教育機関では、届出を適正に行うための管理業務が煩雑になることもあるかと思いますが、たとえ努力義務であっても、今後のスムーズな審査のためにもきちんと行う必要があるということです。
参考:
出入国管理及び難民認定法 | e-Gov 法令検索
所属機関による届出手続 | 出入国在留管理庁
「外国人雇用状況の届出」について |厚生労働省