こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。

在留カードとマイナンバーカードの一体化が予定されていることについては、既に新聞報道等でご存知の方も多いと思いますが、これを実施するための法律(改正法)が令和6年(2024年)6月21日に公布されています。今回は、この改正法による主な変更点を予め見ておきたいと思います。

なお、この法律は(2024年8月現在)まだ施行されておらず、先の新聞報道によれば、一体型の新しい在留カードの交付が始まるのは2025年度、と見込まれているようです。

選択的に一体化「特定在留カード」での交付を申請できるようになる

マイナンバーカードの機能が付加された在留カードは「特定在留カード」と呼ばれます。

通常の在留カードがすべて「特定在留カード」に切り替わるのではなく、以下の場合に希望すれば、「特定在留カード」への切り替えができるようです。

①出入国在留管理局で入管法に基づいて行う申請や届出の時
在留資格変更申請、在留資格更新申請、永住許可申請、在留カードの有効期間更新、住居地以外の記載事項変更届出、汚損等による再交付など

②市区町村役場で行う住民基本台帳法と連動する手続きの時
中長期在留者が行う新規上陸後の住居地届出や住居地の変更届出など

つまり、通常の在留カードの交付や在留カードへの住所裏書き(登録)を受ける代わりに「特定在留カード」の交付を求める申請をすることができるということのようです。実務上の具体的な手続きについては、今後、確認していく必要があります。

「特定在留カード」では券面への記載事項が減る?

入管法第19条の4(在留カードの記載事項等)が改正され、以下の3項目は、在留カードの記載事項等から削除され、「その他法務省令で定める事項」という項目が追加されています。この3つは法定事項ではなく、省令で定める事項になったようです。

  • 在留期間
  • 許可の種類及び年月日
  • 在留カードの交付年月日

改正法では「在留カードの様式その他在留カードについて必要な事項は、法務省令で定める」とされており、上記の3項目は「在留カードに電磁的方式により記録するものとする」とされています。確かに、出入国在留管理庁のホームページに掲載されている「特定在留カード」の券面イメージには、これらの項目は見当たりません。

在留資格の諸申請の時には、現在の在留期間を申請書に記入する必要がありますので、券面に在留期間が記載されていないのは不便な気がします。ちょっと気になりました。

一体化カードへの切り替えはどこまで進むのか?

改正の意図として、「外国人の利便性を向上させることにより、共生社会の実現を目指す。」としつつも、一方で「義務ではなく、一体化しないことも可能。」ということも明確にされています。これは必ずしもマイナンバーカードと在留カードの一体化がすべての外国人の方にとって必要な機能ではないという風にも受け取れます。切り替えによって利便性が高まるのは、一部の方に限られるのでしょうか。例えば永住者など在留期限が無期限の方にとっては、先程の3つの項目が券面を見て分かることはあまり重要ではないかも知れません。また、発行手数料がいくらになるのかも気になります。

マイナンバーカード普及の後押しとなるか?

改正法の概要資料の中には「今後、マイナンバーカードの機能拡充が図られる予定」という記載もあります。総務省の最新のデータによると、住民基本台帳に登録された日本国内全体の人口に対するマイナンバーカード保有率は2024年7月末時点で74.5%。機能拡充によって国民の利便性を高めることに加え、今後益々増加が見込まれている外国人住民の方に対しては、在留カードとの一体化がマイナンバーカード普及のカギとなるのでしょうか。

外国人の方のマイナンバーカードの保有率は2024年1月末時点で6割弱(同時点の国内全体の保有率は73.1%)とのことですが、「特定在留カード」が導入されることによってこの割合は増えるのか、あるいは現在マイナンバーカードを持っている人の一部が切り替えるくらいなのか、実際に「特定在留カード」の発行が始まった後の動向にも注目して行きたいと思います。

参考:
「外国人在留カード+マイナンバーカード」一体の新カード発行へ - 日本経済新聞 (nikkei.com)
令和6年入管法等改正法について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
総務省|マイナンバー制度とマイナンバーカード|マイナンバーカード交付状況について (soumu.go.jp)