こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。
前回は、「高度専門職」1号と2号に違いについてまとめてみましたが、今回も引き続き高度専門職に関するトピックを取り上げてみたいと思います。
高度専門職は、もともと「高度人材ポイント制」によって、高度外国人材の受入れを促進するための優遇措置が設けられている在留資格でしたが、昨年、2023年4月からは、これとは別に「ポイント制によらない」、更に優遇措置が拡大された“特別高度人材”として「高度専門職1号(イ、ロ、ハ)」や「高度専門2号」の在留資格を認める制度が導入されています。この新しい制度は「J-Skip」とも呼ばれています。
J-Skipの制度によって高度専門職の在留資格を手に入れた方には、特別高度人材証明書が交付され、在留カードは表面は従来の高度専門職の方と同じですが、裏面欄外の余白には「特別高度人材」と記載されます。
J-Skipは年収の高さが特徴
“特別高度人材”として認められる要件は、下記の通り、「年収」と「学歴または職歴」のみのシンプルな基準です。
①高度専門職1号イ:高度学術研究活動(大学教授や研究者等)
②高度専門職1号ロ:高度専門・技術活動(企業で働く技術者等)
J-Skip要件:年収2,000万円以上で、修士号以上取得または職歴10年以上 ⇒ 特別高度人材
③高度専門職1号ハ:高度経営・管理活動(企業の経営者等)
J-Skip要件:年収4,000万円以上で、職歴5年以上 ⇒ 特別高度人材
年収のハードルが高くなっていることが特徴ですが、要件を満たす方なら申請書類は「ポイント制」よりもかなりシンプルになります。従来の「ポイント制」では高度人材として活躍するためのポテンシャルで評価されている部分もありますが、J-Skipでは、実力重視で即戦力を求めているといったところでしょうか。
J-Skipで拡大された優遇措置
従来の「ポイント制」よりも優遇措置として拡大されているのは、以下の3つです。
①外国人家事使用人の雇用(世帯年収3,000万円以上なら家庭事情要件等なしで2人まで)
②配偶者の就労(経歴等の要件を満たさなくても就労可能な仕事の幅が拡大)
③大規模空港等に設置されているプライオリティレーンの使用
夫婦共にしっかり働いて高収入を得る富裕層や、グローバルに活躍する多忙なビジネスパーソンを想定して拡大された優遇措置と言えそうです。
配偶者の就労要件が緩和されてはいるが
ここでちょっと気になるのは、配偶者の就労です。確かに、配偶者が働き易いように優遇措置が拡大されてはいるのですが、海外で働いていた配偶者がそれまでの仕事を辞めて日本に来ることが前提になっているのが少し残念です。現在は、フルリモートで働ける会社も増えているのに、日本に長期滞在しながら海外の会社でフルタイムの勤務を続けることは、やはり、まだできないようです。“特別高度人材”の配偶者で、海外のリモート勤務をしたい方は、いたとしてもほんの一握りで、日本経済に与える影響は非常に限られていると思います。これについては、外国人の方からの要望も特にないのでしょうか。もしくは敢えて、夫婦で日本の社会に根付いて長く働いてもらいたい等、何らかの意図があるのでしょうか。
高度外国人材の在留者数-断トツ1位は中国人
高度外国人材の在留者数は、年々増えています。下の表は2022年末までの推移ですが、2023年以降はJ-Skipの導入に加え、コロナ禍も収束していることから、これから更に大きく拡大しそうです。
高度外国人材に占める国籍別の比率は、2022年末では中国が63.9%と断トツの1位、すべての在留資格の中での中国籍の方の割合(24.8%)に対して非常に高い割合です。また、2位のインドは、高度外国人材に占める国籍別の比率は5.7%ですが、すべての在留資格の中でのインド国籍の方の割合(1.4%)と比べるとかなり高いと言えます。
2023年、2024年の数値がどのように変化していくのかについても、注目して行きたいと思います。
*特別高度人材(J-Skip)については、こちらでも解説しています。
https://attorney-office.com/japanvisa/j-skip