こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。
在留資格を「高度専門職1号(イ・ロ・ハ)」へ変更する方の多くは、次のステップとして永住許可申請を考えていらっしゃるようです。高度専門職の在留資格をお持ち方は、「高度外国人材ポイント制」を活用した優遇措置で通常よりも早く永住許可申請を行うことができます。今回は、このポイント制を活用した永住許可申請について理解を深めておきたいと思います。
「高度専門職」以外の在留資格の方もポイント制活用は可能
ポイント制を活用した永住許可申請には、4つのパターンがあります。
永住許可申請時点の ポイント | 現在の在留資格 | 過去のポイント | 在留期間実績 | 永住許可申請時点のポイント証明 以外に必要な ポイント証明資料 |
---|---|---|---|---|
80点以上 | 「高度専門職」 ※1号(イ・ロ・ハ)及び2号 | 現在の在留資格が許可された時点で80点以上 | 現在の在留資格で1年以上継続して在留している | 前回の高度専門職ポイント計算結果通知書の写し |
上記以外の在留資格 | 永住許可申請の1年前の時点で 80点以上 | 1年以上継続して在留している | 永住許可申請の1年前の時点での計算表と疎明資料 | |
70点以上80点未満 | 「高度専門職」 ※1号(イ・ロ・ハ)及び2号 | 現在の在留資格が許可された時点で70点以上 | 現在の在留資格で3年以上継続して在留している | 前回の高度専門職ポイント計算結果通知書の写し |
上記以外の在留資格 | 永住許可申請の3年前の時点で 70点以上 | 3年以上継続して在留している | 永住許可申請の3年前の時点での計算表と疎明資料 |
実際には、先ず在留資格を「高度専門職」に変更してから、永住許可申請を考える方が多いようですが、上記の通り、「高度専門職」以外の在留資格をお持ちの方でも、1年前または3年前の時点でポイント要件を満たしていれば、高度外国人材ポイント制による優遇措置を活用して早期に永住許可申請を行うことが可能となっています。
なお、「高度専門職1号(イ・ロ・ハ)」では、現在付与されている在留期間は一律5年、「高度専門職2号」では無期限ですので心配ありませんが、その他の在留資格の方は、永住許可申請の一般要件として、現在の在留資格で3年以上が付与されていることも確認が必要です。
提出資料が少なくて済むというメリットも
永住許可申請のときは、多くの書類を集めて提出することが必要となりますが、ポイント制を活用すると在留期間の実績要件が緩和されるため、提出資料も少なくて済むものがあります。
ちなみに、通常、就労資格をお持ちの方(引き続き10年以上日本に在留し、就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留している方)が永住許可申請を行う場合、住民税の課税証明書・納税証明書は直近5年分、年金や国民健康保険料の記録は2年分の提出が必要ですので、80点以上のポイントを活用できる方はこの点でもメリットが大きいと言えます。
申請要件の区分 | 期間が変わる提出書類 | 提出必要期間 |
---|---|---|
永住許可申請時点のポイントが80点以上で、在留資格「高度専門職」を80点以上で許可されている方及び永住許可申請の1年前の時点で80点以上の方 | 住民税の課税証明書・納税証明書 | 過去1年分 |
年金の記録 | 直近1年間 | |
国民健康保険料の記録 ※直近1年間に国民健康保険に加入していた期間がある方 | 直近1年間 | |
永住許可申請時点のポイントが70点以上で、在留資格「高度専門職」の方及び永住許可申請の3年前の時点で70点以上の方 | 住民税の課税証明書・納税証明書 | 過去3年分 |
年金の記録 | 直近2年間 | |
国民健康保険料の記録 ※直近2年間に国民健康保険に加入していた期間がある方 | 直近2年間 |
転職した時の注意点
過去1~2年間に転職している方は、税金や年金、健康保険料の納付漏れがないことを確認することがとても重要です。納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付は、公的義務であり、適正に履行されていない場合は永住許可の要件を満たしていないものと判断されます。
公的義務の履行については、ガイドラインにも「申請時点において納税(納付)済みであったとしても、当初の納税(納付)期間内に履行されていない場合は、原則として消極的に評価されます。」と明記されています。
また、永住許可申請の審査期間は1年以上にも及ぶことが多いため、永住申請中に転職することもあるかも知れません。その場合は、再度、ポイント計算が必要になりますし、「高度専門職1号」の方であれば、在留資格変更許可申請も必要です。その他、勤務先が変わったことに伴い、再提出が必要になる書類もあります。そして、転職に伴って離職期間が発生した場合は、健康保険未加入期間や年金の未納期間がないように適正な手続きを行うことが不可欠です。
永住許可申請中に転職などの変更があった場合は、速やかに申請先の出入国在留管理局に連絡する必要があることは、申請時に提出する「了解書」に明記されています。
現在、永住許可申請と転職を考えている方は、可能であれば、転職の手続きを無事完了させてから、転職と重ならない時期に永住許可申請を行うことをお勧めします。
過去に提出した疎明資料を転用してもらう方法
なお、転職した場合だけでなく、永住許可申請時にポイント計算表を提出する時でも、過去に提出したものと内容が変わらない疎明資料がある場合は、「資料転用願出書」を出すことで、同じ資料を再度提出する手間を省くことが可能です。資料転用願出書には、元の資料を提出した時の申請の種類、申請日、申請番号、資料の名称を記載する必要がありますので、申請の記録は保存しておくと良いしょう。
参考:
永住許可申請4 | 出入国在留管理庁
永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂) | 出入国在留管理庁
