こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。
皆様ご存じのとおり、2025年1月20日にアメリカ大統領就任式が行われ、第二次トランプ政権が始まりました。就任初日から大統領令26本、大統領覚書12本、布告4本の計42本に署名されたと報道されておりました。本日はこの中で、ビザや国籍に関わりのある大統領令について、ご案内させていただきます。
アメリカ出生地主義の終焉？
アメリカは出生地主義の国です。出生地主義（しゅっしょうちしゅぎ）あるいは生地主義（せいちしゅぎ）とは、出生による国籍の定め方について、親の国籍に関わらず、出生した場所が自国内であれば国籍を付与するというものです。つまり、両親が日本人であってもアメリカ国内で生まれた子は、生まれながらにして自動的にアメリカ国籍を付与されます。日本にも出生による日米二重国籍の方もたくさんいらっしゃるでしょう。アメリカ以外にもカナダ、ブラジル等世界には出生地主義をとる国はあります。また、親がその国の永住権を持っていれば、その国で生まれた子はその国の国籍を付与される等条件付き出生地主義を取っている国もあります。
出生地主義に対する概念は血統主義です。その代表は日本です。少なくとも父母のいずれかが日本国籍を持っている状態で生まれた子はどこで生まれようと日本国籍を付与されます（ただし、海外で出生の場合には、決められた期間内に届出が必要なので、要注意です。）。日本は原則として血統主義を採用しておりますが、「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき」には、その子を日本国民とすると国籍法第二条一項三号規定されており、無国籍の子が生じないよう補足的に出生地主義が採用されております。
この出生地主義や血統主義については、各国ともその歴史的経緯から定められているようですが、国内の状況を受けて、制度を変えている国もあります。例えば、かつては出生地主義だったインドはバングラデッシュからの不法移民の増加を受けて、2004年12月に出生地主義を廃止し、血統主義に移行しています。
アメリカは出生地主義を代表する国なので、アメリカ国籍を欲しい外国人がかつては「出産ツアー」で渡米し、子のアメリカ国籍を確保するというようなことがいわば公然と行われておりました。現在は少なくとも出産を目的としてＢ（観光）ビザ申請しても許可は得られません。とはいえ、たまたま駐在中に米国で生まれた子については、特に問題なく国籍を付与されるので、日本にも日米二重国籍の方が割と多くいらっしゃるのです。
このアメリカの出生地主義がトランプ大統領によって、終焉を迎える可能性があります。就任初日に署名された大統領令では、下記の内容が示されました。
- 母がアメリカで不法滞在
- 母がESTA、Bビザ、F（学生）ビザ、就労ビザ等一時的なアメリカ滞在
上記いずれの場合でも父がアメリカ国籍あるいは永住権（グリーンカード）を有している場合には、子はアメリカ国籍を付与されるものの、そうでない場合にはアメリカ国籍は付与されなくなると大統領令には記載されております。つまり、父母のいずれかが米国籍かグリーンカードを持っていれば、これまでと変わらないものの、そうでない場合にはアメリカ国籍は取得できなくなる可能性があります。
ただし、アメリカの出生地主義は南北戦争の結果を受けて、憲法修正第14条で「アメリカ合衆国で生まれ、あるいは帰化した者、およびその司法管轄権に属する者はすべてアメリカ合衆国の市民であり、その居住する州の市民である。」と定めているため、トランプ大統領の大領令は違憲だとして、既に各地で提訴されています。憲法vs 大統領令という構図となっており、どのような決着を見るのか今後の動きを注視する必要があります。
不法滞在外国人への取り締まり強化
その他にも不法滞在外国人への取り締まり強化に関する大統領令に署名がなされております。こちらは既に報道されているとおり、「不法滞在者は全員犯罪者」というトランプ大統領の信念のもと、各地で不法入国、不法滞在外国人が逮捕され、軍用機等で強制送還されています。この大統領令の中で、入国審査官の増員等も記されていることから、今後の影響として、下記が考えられます。
・入国審査の厳格化
・犯歴、オーバースティ歴、移民国籍法違反等がある場合のビザ審査の厳格化
今は不法滞在の一掃で忙しいようですが、落ち着いたころに他への影響が見え始める可能性があります。
以上のように、今後のトランプ大統領の言動には目が離せない状況がしばらく続きそうです。
IMSでは米国非移民ビザの相談を随時受け付けております。ぜひお気軽にお問合せください。
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