こんにちは、行政書士法人IMSの稲田です。

今年(2024年)4月に、在留資格「留学」にかかわる部分で上陸基準省令の一部が改正されました。それに伴い、今後、在留資格の各種申請における提出書類について変更が予定されている他、日本語教育を行う大学では、留学生を受け入れるための要件として、他の日本語教育機関と同様、日本語教育機関認定法に基づいて、文部科学大臣による認定を受けることが必要となります。法令の施行から5年間、移行に伴う経過措置はありますが、詳細についてはまだ不明な部分もあります。出入国在留管理庁では、これに関連するQ&Aの更新やガイドラインの提供も予定しているようですが、改正の趣旨を理解しておくことで、今後の実務の変更にも対応しやすくなるかと思いますので、今回はその理解に役立ちそうな情報をまとめておきたいと思います。

基準省令改正の背景

事の発端は今から5年程前(2019年頃)、一部の大学や専門学校で多くの留学生が所在不明となっていたことが発覚したことでした。2016年度からの3年間で千人以上が所在不明となっていた大学もありました。所在不明となった学生は、不法滞在や不法就労等の問題につながっていることが懸念されます。文部科学省及び出入国在留管理庁のその後の調査で、所在不明となった学生の多くは、大学の正規課程への準備段階に当たる「学部研究生」であり、問題点として、留学生に対する不十分な在籍管理、不適切な入学選考等があるとされています。日本語能力が不十分な学生に適正な日本語教育を行わず、安易な学生集めを行っている教育機関の存在が明らかになったということです。

その後、各大学等へは、在籍管理の徹底や、退学者・除籍者・所在不明者の定期報告の実施方法の見直しを行い、在籍管理が適正に行われていない大学等については在留資格審査を厳格化するなどの対応策が講じられています。

改正のポイント

そして、今回の上陸基準省令の改正には以下の点が盛り込まれています。

  1. 留学生を受け入れる教育機関が、受入れに必要な管理体制を整備していることを要件とする。
  2. 研究生・聴講生として、専ら日本語教育を受けようとする者については、「留学」を認めない。
  3. 日本語教育を行う場合を除き、専修学校又は各種学校で受け入れる留学生の日本語能力要件の内、日本語教育機関での履修歴を「6ヵ月以上」から「1年以上」に変更する。

なお、2.の通り、大学の研究生・聴講生としては、「専ら日本語教育受けようとする者」を受け入れることが出来なくなる訳ですが、大学で「専ら日本語教育を行う」課程を設ける場合については、大学が「認定日本語教育機関」として、認定を受けることが必要となります。そして、大学の「専ら日本語教育を行う」「留学生別科」等で受け入れる留学生は、上陸基準省令上、大学ではなく日本語学校等で受け入れる場合と同様の扱いとなります。

研究生・聴講生への影響

出入国在留管理庁から、大学等に対して出されている文書に、経過措置が終了する令和12年1月1日以降の在留期間更新許可申請及び在留資格変更許可申請、及び令和12年4月1日以降の在留資格認定証明書交付申請での提出書類として、大学等の留学生のうち、正規生等(正規生、国費留学生、交換留学生)以外の者(専ら日本語教育を受けようとする者を除く)については、「専修学校・各種学校と同等の提出書類を求めることを予定しています」という、記載があります。下線を引いた部分は、言い換えると、「研究生・聴講生」と考えて良いかと思います。そして、「専修学校・各種学校と同等の提出書類」になると、大学の場合とは何が違うのかというと、「日本語能力に係る資料」が追加されることになります。

詳細については引き続き注視が必要

改正の趣旨から考えると、日本語能力が不十分な学生を日本語で行われるコースの研究生・聴講生として安易に受け入れるのを阻止することが目的のはずです。ですので、もし、受講するコースが英語など日本語以外の言語で参加可能なものであれば、必ずしも「日本語能力に係る資料」は必要ないはずです。令和12年(2030年)までまだ時間がありますので、今後、求められる資料の内容や条件の詳細もガイドライン等で明らかにされていくことと思いますが、本来の趣旨とは違うところで、混乱や手続きの煩雑さが増さないことを願います。

参考:留学生の在籍管理の徹底に関する新たな対応方針に基づく措置について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)