こんにちは、行政書士法人IMSの稲田です。

中長期在留者として在留カードが交付されている外国人の方は、住居地の届出を行う必要があります。これは、基本的な事項として行われていると思いますが、今回は、この住居地の届出の根拠となっている法律や、これを怠った場合について、理解を深めておきたいと思います。

入管法と住民基本台帳法の特例

新しく日本に入国した外国人の方は、住居地を定めた日から14日以内に届出を行う必要があります。入管法では、「新規上陸後の住居地届出」(19条の7第1項)として定められていますが、住民基本台帳法でも「中長期在留者等が住所を定めた場合の転入届の特例」(30条の46)として定められており、市区町村の窓口で行う手続きとなっています。

同様に、中長期在留者が住居地を変更したときは、入管法では、「住居地の変更届出」(19条の9第1項)として定められていますが、住民基本台帳法でも「転入届」(22条)、「転居届」(23条)、および先程と同じ規定(30条の46)により、市区町村の窓口で行う手続きとなっています。

ホテルや研修施設など、住民票の記載ができない場所や、住民票を作成する必要がない場合でも、一定期間滞在する場合は、入管法上の住居地の届出は必要なため、この届出も市区町村の窓口で行うことができるようになっています。

住居地の届出義務を怠ると在留資格の取消し事由となる

入管法では、在留資格の取消し(22条の4)という制度があり、10項目の取消し事由となる事実が挙げられていますが、その中の2つ(第8項、第9項)は住居地の届出に関するものです。

(8) 上陸の許可又は在留資格の変更許可等により、新たに中長期在留者となった者が、当該許可を受けてから90日以内に、出入国在留管理庁長官に住居地の届出をしない場合(ただし、届出をしないことにつき正当な理由ある場合を除きます。)。

(9) 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に届け出た住居地から退去した日から90日以内に、出入国在留管理庁長官に新しい住居地の届出をしない場合(ただし、届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除きます。)。

なお、ここでの「正当な理由」とは、個別具体的に判断されることになりますが、例えば、次のようなケースが考えられるとされています。

届出をしない正当な理由とは

  1. 勤めていた会社の急な倒産やいわゆる派遣切り等により住居を失い、経済的困窮によって新たな住居地を定めていない場合
  2. 配偶者からの暴力(いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス))を理由として避難又は保護を必要としている場合
  3. 病気治療のため医療機関に入院している場合等、医療上のやむを得ない事情が認められ、本人に代わって届出を行うべき者がいない場合
  4. 転居後急な出張等により再入国出国した場合等、再入国許可(みなし再入国許可を含む。)による出国中である場合
  5. 頻繁な出張を繰り返して1回当たりの本邦滞在期間が短いもの等、在留活動の性質上住居地の設定をしていない場合

デジタルノマドにも住居地の届出義務はあるのか?

さて、2024年4月から、国境を越えて旅をしながらリモートワークをする「デジタルノマド」を対象とした在留資格「特定活動」(告示53号)が新設されましたが、この方たちにも住居地の届出義務はあるのでしょうか?

こちらは在留期間「6月」ですが、「在留カードの交付対象外」とされておりますので、中長期在留者の扱いではないようです。従って、住居地の届出義務はないようです。また、要件の1つとして、「海外旅行傷害保険等の医療保険に加入していること」が定められていますので、国民健康保険に加入することは想定されていないことが分かります。そもそも住所を定めないのがノマドですので、外国人住民ではなく、旅行者の扱いなのですね。

<参考>

出入国在留管理庁HP:出入国審査・在留審査Q&A
https://www.moj.go.jp/isa/immigration/faq/kanri_qa.html

在留資格の取消し(入管法第22条の4)
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/torikeshi_00002.html

在留資格「特定活動」(デジタルノマド(国際的なリモートワーク等を目的として本邦に滞在する者)及びその配偶者・子https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/designatedactivities10_00001.html