こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。
近年、航空券の高騰にもかかわらず、アメリカ渡航を希望される方は依然多く、当法人にもビザに関するご相談を多数いただいています。
前回は、**「逮捕歴や不起訴処分歴がある場合にアメリカへ行けるのか?」**というテーマで、ESTA申請時の適格性質問や、非移民ビザ申請書(DS-160)のセキュリティ質問について解説しました。
今回は、**「不起訴処分となった逮捕歴をESTAで申告せずに渡米しても問題ないのか?」**について詳しく見ていきます。
不起訴処分とは?前科はつかないが…
「不起訴処分」とは、検察官が起訴しない決定をすることです。
- 裁判を行わないため、有罪・無罪の判断はされない
- 前科はつかない
しかし、ESTAで渡米した際、日本での逮捕歴をアメリカの入国審査官から指摘されるケースがあります。それはなぜでしょうか?
指紋データ共有を義務付ける「PCSC協定」
理由は、日本とアメリカの間で締結された**日米重大犯罪防止対処協定(PCSC協定)**にあります。
この協定は以下を目的としています:
- ビザ免除制度の維持
- 重大犯罪防止のための迅速な情報共有
2019年1月5日、日本もこの協定を発効しました。
なぜ不起訴でも影響するのか?
「重大犯罪」という言葉から、軽微な事件や誤認逮捕は無関係と思われがちです。しかし実際には、
- アメリカが特定者を識別せずに照会すると、日本警察庁が保有する全ての指紋データが対象
- 有罪判決を受けた人、不起訴処分の人、無罪の人、現場に残った指紋まで照合対象
したがって、不起訴であっても、過去に指紋を取られていれば、入国審査で「逮捕歴がありますね?」と指摘されるリスクが極めて高いのです。
日本とアメリカの間では、いわゆる「日・米重大犯罪防止対処協定(PCSC協定)」という犯罪者の指紋データベース情報を互いに共有する条約が締結されています。この協定は、「査証免除制度の維持」と「迅速な情報交換を通じた重大な犯罪の防止・捜査」の2つが目的となっており、9.11テロ以降、アメリカは全てのビザ免除国に対して、条約の締結を要請してきました。日本は、ビザなし渡航が認められている国の中では最も遅く締結し、2019年1月5日に同協定が発効しています。
「重大犯罪」という言葉が使われているため、不起訴処分になるような微罪やそもそも誤認逮捕だった場合には、関係ないものと思われがちですが、実際にはたとえ「不起訴処分」だったとしても、この協定が大きく影響を与えます。確かに「重大犯罪」として、協定上、定義されているのは、死刑、無期、3年以上の拘禁刑のほか、1年を超える拘禁刑のうち、協定附属書で定められた34の犯罪類型(テロリズム、殺人、放火、詐欺、贈収賄等)です。しかしながら、この協定に則り、アメリカが特定の者を識別しないで照会した場合には、日本の警察庁が保有する指紋全てが照合対象になります。つまり、有罪判決を受けた人、不起訴処分で終わった人、無罪判決を受けた人、たまたま現場に残っていた指紋、これら全てが照合対象となってしまいます。
お時間がある方は、この協定が国会で承認される直前の外務委員会での議事録を読んでいただくと良く分かると思います。他の条約についても審議されていますので、「指紋」で検索してみてください。
米国大使館の公式見解
ちなみに、米国大使館のウェブサイトには、ビザ免除プログラムを利用できない場合として、下記のように記載されています。
「有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方、犯罪歴(恩赦や大赦などの法的措置がとられた場合も含む)がある方、重い伝染病を患っている方、過去に米国への入国を拒否されたり、強制送還された方、そしてビザ免除プログラムで入国し、オーバーステイしたことがある方は、ビザ免除プログラムを利用することはできません。渡米するためには、ビザを取得しなければなりません。ビザを持たずに入国しようとすると入国を拒否されることがあります。」
以上のことから、弊社ではたとえ不起訴処分であっても、逮捕歴のある方のESTA渡米はお勧めしておりません。正直に申告の上、ビザを取得できれば、正々堂々と渡米できます。弊社では不起訴処分歴のある方のビザ取得実績が多数ございますので、ご不安な方はぜひIMSまでご相談ください。
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