こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。
コロナにより長らくの間、ほぼ鎖国状態が続いていた日本ですが、ワクチン接種要件等水際対策は一部残るものの、10月11日よりビザの面ではほぼコロナ前の状態に戻ります。入管関係でもコロナ禍で様々な救済措置が超法規的とも言える方法で存在しましたが、恐らく徐々になくなっていくものと思われます。ご心配な方は入管のウェブサイト等で最新情報をこまめに確認されることをお勧めします。
弊社では現在、日本、アメリカ、ベトナムビザを取り扱っておりますが、この3か国の中で最も厳しいのは、アメリカだと感じています。アメリカビザやアメリカの出入国審査は、世界の中でもかなり厳しい部類に入るのではないでしょうか。アメリカのビザが厳しいと感じる理由はいくつかありますが、その一つが審査にあたり、逮捕歴そのものを重視する点です。
ESTAの適格性の質問
渡米の際に、永住権(グリーンカード)を持たない外国人は漏れなくESTAの認証あるいは何らかの非移民ビザを所持していることが必須です。ESTAには適格性の質問の中に、犯罪歴に関して次のような質問があります。
「あなたはこれまでに、他者または政府当局に対して、所有物に甚大な損害を与えるか重大な危害を加えた結果、逮捕または有罪判決を受けたことがありますか?」
ESTAのこの質問は非常に判断が難しい場合があります。「所有物に甚大な損害を与えるか重大な危害を加えた結果」という箇所の定義が特にあるわけではないので、ご自身の事件がこの質問に該当するかどうかは自分で判断しなければなりません。また、「逮捕または有罪判決」のため、「逮捕」はされたけれども、有罪判決を受けていない場合でも「はい」と回答しなければならないケースもあると思われます。ESTAと同様の電子渡航認証システムがあるカナダ、オーストラリア等にも「犯歴」の質問はありますが、「逮捕歴」まで質問される国はアメリカのみです。
ビザ申請書のセキュリティ質問
また、米国非移民ビザ申請の際には、DS-160というオンライン申請書を作成の上、提出しなければなりません。DS-160には30個ものSecurity Questionsがあるのですが、その中に下記のような質問があります。
「これまでに何らかの違法行為によって逮捕されたり、有罪判決を受けたことがありますか? (恩赦、大赦などの法的処置が取られた場合も含む。)」
こちらの質問には、ESTAのような「所有物に甚大な損害を与えるか重大な危害を加えた結果」という言葉が付いていないため、たとえ、「不起訴処分」であっても、逮捕歴がある場合には、正直に「はい」と答えなければ、虚偽申請となってしまいます。アメリカは虚偽申請には非常に厳しい態度をとるので、注意が必要です。
不起訴処分でもビザ却下?
日本では、たとえ逮捕されたとしても「不起訴処分」に終わった場合、勾留されていれば、身柄が解放され、その後、刑事裁判を受ける必要もなく、前科もつきません。「不起訴処分」であれば、ほぼ無罪放免のようなものですが、それにも関わらず、アメリカビザ申請においては、何らかの事件で容疑があった事実自体を重く受け止めます。不起訴になる理由は、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予等様々ありますが、不起訴処分の9割以上は起訴猶予とも言われております。起訴猶予とは、犯罪を犯したこと自体は事実であり、その証拠もあるものの非常に軽微なもので、既に示談が成立している場合などになされる処分なので、その前科がつかないような軽い罪すらも、米国は重く受け止めているのかもしれません。
不起訴処分を受けたことがある場合には、ビザ申請の際に「不起訴処分告知書」をその英訳とともに提出する必要がありますが、この告知書にはどのような容疑があったかは記載されるものの、不起訴の理由までは、記載されません。したがって、誤認逮捕のような「嫌疑なし」による不起訴処分なのか、軽い罪があった可能性のある「起訴猶予」なのかは領事には分かりません。それでも、領事はその事件の内容を書類や面接で確認し、ビザの発給の可否を判断します。実際に「不起訴処分」であっても、ビザが発給されないケースはあります。
次回は「不起訴処分」となった逮捕歴をESTA申請で申告せずに、渡米しても問題がないのかどうかについて、ご案内する予定です。
弊社では、逮捕歴のある方のアメリカビザ申請についても多数実績があります。申請の可否、許可の可能性についても事前に判断しておりますので、お気軽に弊社までお問い合わせください。
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