こんにちは。行政書士法人IMSの松井です。
昨年大晦日に突然入ってきた保釈中のミスターGの逃亡劇の報道には、大変驚きました。まず、頭に浮かんだことは、いったいどのようにして 日本を出国したのかということです。逃亡のニュースとともに出入国在留管理庁(入管)関係者の話として、入管データベースにミスターGの出国記録はないという報道されたため、下記のような方法を考えていました。
- 偽造旅券で他人になりすまして出国
- 出国審査を受けずに、船で出国
- ヒトではなく、モノとして出国(外交特権を利用か?)
出入国管理及び難民認定法第25条には下記のように規定されています。
「本邦外の地域に赴く意図をもつて出国しようとする外国人は、その者が出国する出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官から出国の確認を受けなければならない。
2 前項の外国人は、出国の確認を受けなければ出国してはならない。」
したがって、上記①~③はいずれも不法な出国となります。
ちなみに、米国には出国審査がありません。アメリカへの渡航歴がおありの方はご存知かと思いますが、航空会社でのチェックインカウンターで出国の事実を把握されるだけです。ですから、仮にオーバースティだったとしても、通常はすんなりと出国できてしまいます。ただし、次の入国のときの入国審査において、前回のオーバースティ歴について問われることとなります。ここで、きちんとした説明ができなかったりすると、最悪入国拒否になったりしてしまうわけです。数日程度のオーバースティの場合には入国拒否とまでいかないまでも、次は必ずビザを取得するように言われ、何とか入国させてもらうというケースが多いようです。
さて、ミスターGの出国方法に話を戻しますと、まず①の偽造旅券での出国はかなり難しいと思いました。何せあれだけの有名人ですから、いくら年末の繁忙期とはいえ、入国審査官も気が付くのではないかと思ったわけです。②は島国の日本ではあり得る話ですが、レバノンまでの脱出となるとどこかで飛行機に乗らなければ、相当の時間が掛かってしまいます。一番可能性があるのは、③の荷物の中に隠れて出国だとは思いました。しかし、テロの危険がある昨今、普通は全ての荷物に対して、保安検査がなされているはずなので、荷物検査が免除される外交特権を使ったのではないかと考えていました。外交特権とは「外交関係に関するウィーン条約」に基づき、外交官に対して与えられる特権で、いわゆる不逮捕特権、刑事裁判権や租税の免除、公館の不可侵などがあります。ミスターGは複数の国の国籍を所持しているようだったので、もしかしたらとも思っていました。結局、皆様もご存知のとおり、プライベートジェットの荷物に隠れて出国したという説が有力になっています。そもそも保安検査は、テロやハイジャック等の防止のためなので、自らの飛行機に危険物を持ち込む人はいないという考えから、プライベートジェットに対する保安検査は機長の裁量に任されていたようです。正に出国手続きの穴を突かれてしまったのでしょう。
この件では他にも疑問に思った点がありますが、長くなりましたので次回にさせていただきます。