こんにちは。行政書士法人IMSの稲田です。

国際間での人々の移動や交流が増えている現在、日本人の方でも海外で出産される方や国際結婚をされる方も多くいらっしゃいます。現状、日本では二重国籍は認められていませんが、今話題の「出生地主義」の国で生まれた日本人の子供や、両親が国際結婚をして生まれた子供などは、生まれた時点では二重国籍を持つことが出来ます。

今回は、二重国籍について、理解を深めて留意点を確認しておきたいと思います。

日本の国籍法は「血統主義」

子供が生まれた時の国籍の決め方は、それぞれの国の法律によって異なります。また、二重国籍を認めるかどうかや、認める場合の条件なども国によって様々です。国籍の決め方には、「出生地主義」と「血統主義」の2つの考え方がありますが、原則としてどちらを採用している国でも両方が補完的に使われており、その内容も国によって異なります。日本の国籍法は、「血統主義」を採用していますが、両親が不明な場合や国籍を持たない場合、日本で生まれた子供は日本国籍を取得することができます。

国籍法 第二条(出生による国籍の取得)
子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であつたとき。
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。

日本では二重国籍を認めていない

外国の法律および日本の国籍法で定められている、「出生による国籍の取得」で二重国籍となった場合、日本では将来的にどちらか一方を選択することが求められています。

国籍法 第十四条 (国籍の選択)

外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が十八歳に達する以前であるときは二十歳に達するまでに、その時が十八歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

ここで、「外国及び日本の国籍を有することとなつた時が十八歳に達する以前であるとき」という文言ありますが、18歳以前であっても、自分の意思(または親の意思)で、後から外国籍を取得した場合は、その時点で自動的に日本国籍を失います。もし、まだ有効な日本のパスポートを持っていたとしても、この場合は二重国籍には該当しません。

国籍法 第十一条 (国籍の喪失)
日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

二重国籍の解消は努力義務

しかしながら、「出生による国籍の取得」で二重国籍となった方が、第十四条に従って、成人になってから日本国籍の選択をした場合でも、日本と他国の二重国籍を持っているケースは大いにあり得ます。

というのも、世界の多くの国では二重国籍を認めており、国によっては国籍の離脱が困難な場合もあるため、日本国籍を選択する際は、「外国の国籍を放棄する旨の宣言」が求められてはいますが、外国籍からの離脱は、努力義務にとどまっているためです。二重国籍の解消は努力義務であり、特に罰則は設けられていないのです。

国籍法 第十六条
選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。

ということで、成人になって2年以上経った方でも、日本と外国の二重国籍を持つ人は実際には多くいらっしゃるようです。ここで注意が必要なのは、そのような二重国籍を持った方が日本に滞在する場合の在留資格についてです。

二重国籍でも日本国籍があれば「日本人」

出入国管理及び難民認定法では、外国人の定義として「日本の国籍を有しない者をいう」と定めています。日本と外国の二重国籍を持つ人は、日本の国籍も持っていますので、外国人には該当せず、外国人として日本に滞在することは出来ません。例えば、日本とアメリカの二重国籍を持っている方は、日本に入出国する時は日本のパスポートを、アメリカに入出国する時はアメリカのパスポートを使うことが必要となります。

弊社には、外国のパスポートを持っていても入管法上は「日本人」となる方から「留学」や「家族滞在」の在留資格認定証明書交付申請のご依頼を頂くことが稀にございます。国籍選択の前で二重国籍を持っているお子様の場合の他、国籍選択はしていても外国籍を離脱していない大人の場合もありますが、日本の国籍をもっている方については、外国人として在留資格認定証明書交付申請はできませんので注意が必要です。

なお、日本以外の二重国籍(例えば、アメリカとオーストラリアなど)を持っている方については、どちらの国籍で申請しても外国人であることに変わりありませんので問題ありませんが、その後の査証申請および入国時に使用するパスポートは、すべて一貫して同じ国籍であることが必要です。

参考:
国籍法 | e-Gov 法令検索
出入国管理及び難民認定法 | e-Gov 法令検索

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