就労資格「技術・人文知識・国際業務ビザ」
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、日本国内の企業との契約に基づいて行う、自然科学の分野(理科系の分野)若しくは人文科学の分野(文系の分野)の専門的技術若しくは知識を必要とする業務に従事する外国人又は外国人特有の感性を必要とする業務に従事する外国人を受け入れるために設けられたものです。
外国人が日本に滞在し、フルタイムで働くためには、原則として就労資格(就労ビザ)が必要となります。技術・人文知識・国際業務ビザは、代表的といえる就労ビザであり、主に技術者や事務系の専門職を対象としています。一般企業に在職中の大多数の外国人就労者は、技術・人文知識・国際業務ビザを取得し、勤務しています。 「技術・人文知識・国際業務」ビザでは、いわゆる単純労働系の仕事は該当しません。
※以前は「技術」ビザと「人文知識・国際業務」ビザの2種類に分かれていましたが、2015年4月の法改正により、「技術・人文知識・国際業務」ビザとして、1つのビザに統合されました。
技術・人文知識・国際業務ビザに該当する分野
分野については、以下のように分類されます。
技術関連
理学、工学その他の自然科学の分野の技術または知識、いわゆる理系の分野に属する技術や知識を必要とする業務
例:システムエンジニア、プログラマー、土木建築の設計者
人文知識関連
法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野の知識、いわゆる文系の分野に属する知識を必要とする業務
例:営業、コンサルティング、マーケティング、法務、人事、経理
国際業務関連
外国人特有の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務
例:翻訳、通訳、語学の講師、海外取引業務、服飾・室内装飾のデザイン
在留期間
在留期間は、3ヶ月、1年、3年、5年、の4種類があり、出入国在留管理庁の審査を経て付与されます。期限を超えて引き続き勤務するためには、在留期間の更新手続きをする必要があります。
付与される在留期間は、就労予定期間(契約期間)、受入企業・機関の事業規模、経営状況の安定性などによって、出入国在留管理庁が総合的に判断し、決定されます。従って、必ずしも希望する在留期間が許可されるとは限りません。
必須要件
(以下いずれかに該当する、学歴または職歴)
日本国内外を問わず、大学卒業または同等以上の高等教育を受けたこと
本人がどのような内容を専攻したのか、この専攻内容と就職する会社での職務内容が一致していなければなりません。その為、卒業証明書や成績証明書で本人の専攻内容を確認するこが重要となります。
日本の専門学校を卒業し、「専門士」の学位を有すること
専門学校卒業の場合は、日本国外の専門学校は含まず、必ず日本国にある専門学校を卒業しなければなりません。また、専攻した専攻科目と就職する会社での職務内容が一致していなければなりません。
10年以上の実務経験(国際業務の場合は3年の実務経験)
実務経験で、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得していく場合、過去の会社から実務経験を証明する書類を取得しなければなりません。その為、過去の会社から実務経験を証明する書類を取得できるか否かが非常に重要なポイントとなります。もちろん、実務経験を証明する書類を取得できなければ技術人文知識国際業務の在留資格は取得できません。
*大卒以上の者が、通訳・翻訳、語学の指導に係る業務に就く場合は、上記の専攻内容と職務内容の一致、実務経験がなくても、ビザ取得可能です。
(給与・報酬)
日本人が従事する場合に受ける報酬と、同等額以上の報酬
外国人を採用し、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得していくためには、外国人が日本人と同等の給与をもらうことが条件となります。外国人だからという不当な理由で、給与を下げてはいけません。
学歴・職歴 (経歴) について
就労ビザを取得するには、原則として大学・大学院(国内外を問わず))や、日本の専門学校を卒業していること(「専門士」の称号取得)が要件となります。学歴要件を満たさない場合(高卒の場合など)は、10年以上の職務経験(経歴)が必要となります。上記の国際業務に従事する場合は、3年以上の職務経験(経歴)で要件を満たします。
学歴ではなく、職務経験(経歴)の年数で技術・人文知識・国際業務ビザの要件を満たすためには、過去に在職した企業・機関から、実務経験の内容や期間を証明する書類を取得しなければなりません。転職を繰り返している場合は必然的に、複数の企業・機関から書類を入手する必要があります。
※国外の大学等を卒業した場合は卒業証明書と成績証明書の写し、日本の大学等や専門学校を卒業した場合は卒業証明書(または修了証明書)と成績証明書の原本を提出ことになります。
給与・報酬について
外国人が業務に従事する企業・機関において、日本人と同等以上の報酬を得る必要があります。「日本人が従事する場合に受ける報酬と、同等額以上の報酬」については、外国人が勤務する企業・機関において、同等の地位・技術・経験等を有する日本人と比較した場合に、外国人の報酬額を不当に設定していないかが審査されます。同じ企業内に同職種の日本人従業員がいない場合には、同一業種・同一地域の一般的な報酬額などを踏まえて判断されます。
受入企業・機関の経営状況
外国人従業員を雇用可能と見なされる程度に、受入企業・機関の経営が安定しており、かつ今後もその安定性や継続性が見込まれることが必要です。赤字決算の場合、「報酬を支払えないと見なされ、不許可になってしまう」と思われがちですが、単純に赤字イコール不許可とは限りません。赤字決算の場合には、事業計画書を提出するなど、今後も継続的に雇用(報酬の支払い)が可能と見なされるだけの、今後の経営状況に関する何らかの説明が必要となります。なお、新設の企業・機関(決算を一度も行っていない企業・機関)については、決算報告書の代わりに事業計画書を提出することとなります。
【日本国外にいる外国人を採用する場合のビザ手続き】
日本国外にいる外国人を採用して日本で働いてもらうためには、まずは日本の入管(出入国在留管局)に、「在留資格認定証明書交付申請」を提出する必要があります。この証明書が交付されたら、実際に日本に来て働く方が本国で就労資格の査証を取得して来日することになります。 この「在留資格認定証明書交付申請」は、日本側の企業(所属機関)の職員様が代理人となって、日本の入管(出入国在留管局)へ申請を提出することになります。「在留資格認定証明書」が発行されるまでは、約1~3ヵ月間の審査が必要になりますので、余裕を持って申請することを推奨します。弊社では「在留資格認定証明書交付申請」に当たって、企業様や申請人(受入予定の外国人本人)とのコンサルティングや申請人(受入予定の外国人本人)との連絡、申請書作成等、フルサポートが可能です。
【日本国内にいる外国人を採用する場合のビザ手続き】
日本国内にいる外国人を採用する場合は、その外国人が所持している在留資格によって異なります。
日本の大学や専門学校等を卒業した「留学」ビザを持っている留学生を採用する場合
この場合は、「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへの在留資格変更許可申請をする必要があります。
しかし、留学生の卒業時期により変更申請の内容が違ってきます。
9月に卒業して翌年4月入社の場合は、「留学」ビザから内定者を対象とした「特定活動」ビザへ変更申請をし、入社日の約3ヵ月前になったら、「特定活動」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへの在留資格変更許可申請をします。つまり2度の変更手続きが必要になります。
3月に卒業して4月入社の場合は、卒業前であっても入社日の概ね3ヵ月前より、「留学」ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへの在留資格変更許可申請が可能です。この場合は、例えば卒業前に「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更が許可されたとしても、卒業して卒業証明書の原本を提出してから就労ビザを取得することになります。
すでに就労ビザを所持している外国人を採用する場合
すでに就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)を持っている方なら、業務内容に変更がなければそのまま採用することが出来ますが、当該事由が発生した日から14日以内に、入管(出入国在留管局)に「契約期間に関する届出」を提出しかければなりません。なお、在留期限が切迫している場合は、在留期間の更新申請をすれば大丈夫です。
日本での活動に制限のないビザ(在留資格)を所持している外国人を採用する場合
「永住者」「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」「定住者」「特別永住者」ビザを所持している外国人には、日本での就労活動に制限はありませんので、ビザの手続きをすることなく採用することができます。なお、「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」「定住者」ビザには、それぞれ在留期間が付与されていますので、外国人本人が在留期間の更新申請をすることになります。
※在留資格の種類や在留期間については、外国人が所持している在留カードに記載がありますので、採用前には必ず確認してください。
就労ビザの申請における企業のカテゴリー区分について
就労ビザの「在留資格認定証明書交付申請」、「在留期間更新許可申請」、就労ビザへの「在留資格変更許可申請」の際に提出する書類は、それぞれカテゴリー(企業の規模)によって区分されており、各カテゴリー(企業の規模)によって提出書類が異なります。
カテゴリー1 | カテゴリー2 | カテゴリー3 | カテゴリー4 |
---|---|---|---|
(1) 日本の証券取引所に上場している企業 (2) 保険業を営む相互会社 (3) 日本又は外国の国・地方公共団体 (4) 独立行政法人 (5) 特殊法人・認可法人 (6) 日本の国・地方公共団体の公益法人 (7) 法人税法別表第1に掲げる公共法人 (8)一定の条件を満たす中小企業等 | 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中,給与所得の源泉徴収票合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人 | 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) | 左のいずれにも該当しない団体・個人 |
※上記のカテゴリーによる企業規模よって提出書類が異なり、具体的な提出書類については外国人の状況毎に違いますので、弊社までにお問い合わせください。
就労資格「企業内転勤ビザ」
企業内転勤とは、「日本に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が、外国の事業所から日本にある事業所に期間を定めて転勤して、当該事業所で行う技術または人文知識・国際業務の在留資格に対応する活動」を表します。該当例としては、外国の事業所(グループ会社)からの転勤者です。
- 本店(本社)・支店(支社)間の異動
- 親会社・子会社間の異動
- 親会社・孫会社間の異動、及び子会社・孫会社間の異動
- 子会社間の異動
- 孫会社間の異動
- 関連会社への異動
企業内転勤ビザの基準
申請人が次のいずれにも該当していることが必要です。
- 申請に係る転勤の直前に、外国にある本店、支店その他の事業所において、1年以上継続して、技術・人文知識・国際業務ビザに該当する業務に従事していること。
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と、同等額以上の報酬を受けること。
企業内転勤ビザの在留期間
在留期間は、3ヶ月、1年、3年、5年、の4種類があり、出入国在留管理庁の審査を経て付与されます。期限を超えて引き続き勤務するためには、在留期間の更新手続きをする必要があります。
付与される在留期間は、転勤予定期間(派遣期間)、受入企業・機関の事業規模、経営状況の安定性などによって、出入国在留管理庁が総合的に判断し、決定されます。従って、必ずしも希望する在留期間が許可されるとは限りません。
技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
外国のグループ会社から外国人従業員を招聘する上で、技術・人文知識・国際業務ビザ、企業内転勤ビザ、いずれにも該当するケースは多くありますが、主な違いは以下の通りです。
資格要件
技術・人文知識・国際業務ビザには、大学卒といった学歴上の原則要件、または10年以上の実務経験といった要件あり。
企業内転勤ビザには、学歴・実務経験の要件はないものの、外国の事業所における直近1年間の在職期間があり、在職期間中の職務が、技術・人文知識・国際業務ビザに該当する職務内容、といった要件あり。
転職可否
技術・人文知識・国際業務ビザを取得した場合、他の会社へ転職することとなっても、技術・人文知識・国際業務ビザをそのまま使用することが可能(届出の義務のみ発生し、就労ビザを申請し直す必要なし)。
企業内転勤ビザを取得した後、結果的に転職することとなった場合は、技術・人文知識・国際業務ビザへの変更許可申請を行うなど、就労資格を申請し直す必要性が発生。
IMSにおける在留資格変更・在留期間更新許可申請のフロー
御客様ご自身で申請を行う場合、管轄の出入国在留管理庁への申請の際に1回、申請後の結果受領の際に1回、最低でも二度行かなければならず、多くの時間や労力を費やします。IMSの行政書士は、申請を代行するための取次資格を有しており、申請者ご本人に代わって申請と結果の受領を行うことが可能なため、外国人ご本人に出入国在留管理庁へお出向きいただく必要はありません。